県別博物館数集計

中間レポート 県別博物館数

結論(中間集計):
日本には9,500の博物館があります。
ただし、博物館の定義があいまいですので 9,500の展示施設があるということです。
美術館、動物園、水族館、ショールームは含んでいません。

博物館の数をカウントするというのは簡単そうなのですが、これが実は難問でして 博物館の定義があいまいなのです。

文科省のデータでは登録博物館は全国に913館 博物館相当施設は 349館 博物館類似施設は 4,485館 計5,747館という数字まではあります。
従って、文科省の定める博物館の定義に基づく数というならば 5,747館 ということになります。
博物館は展示ということだけではなく、保存、記録、研究、報告という役割があり、それらの活動をするのが博物館という定義です。

しかし 実際にはそれ以上にたくさんの博物館が日本にはあります。
この定義から外れているのに規模的にも内容的にも一般の人が感じる「博物館らしい」施設は非常にたくさんあります。
どんどん変化してしまうということもあります。

それでもその難問に挑戦してみようということで、じっくり調べてみました。わかっていない部分は推測しようと思います。まだ一部の地域しか調べていないのですが、傾向は既に現れていますので中間報告ということで。

ここでは博物館の数を以下の基準でカウントしました。
・展示、公開の意志があり、解説を加えてモノの展示があるものは大小を問わず1館とカウント。
・美術館、動物園、水族館、文学館は含まない
  陶芸や民芸の展示など美術館と博物館の中間的なものがありますがそれは誤差要因
・企業博物館はカウントに入れていますが、工場見学だけのもの、ショールームはカウントしていません。
・個人運営の小博物館:まちかど博物館も含みます。
  ただし三重県はまちかど博物館が極めて多い県なので含まないものも比較用参考値として表記。
・古民家も常時公開されているものは博物館として含めました。
  ただし他の博物館に併設、展示されているものはその博物館とともに1館としてカウント。
・調査年はおおむね2005〜2015年ごろにかけてですがそれぞれで異なります。これも誤差要因となっています。
・調査方法はインターネット等で調べた上で、実地調査を基本としています。

一般の人が考える博物館よりは広い定義となり、数は多くなっています。「最大の数」と考えていただいくとわかりやすいと思います。
ただし、多くの方は博物館自体に興味が薄く、探してもないでしょうから、印象に残っている博物館しか思いうかばないと思います。実際には博物館は意外とたくさんあります。多くの博物館が身近にもあるはずです。

誤差要因は大きいのですが、重要なのはそれぞれの県でおおむね同じ基準でカウントされていることで、相対的な比較や、傾向をつかむことはできると思います。

調査結果(途中)

@統計上数A博物館のみB調査博物館数Cカバー率D人口比E面積比
埼玉県12611122450%30.987.2
千葉県1158920045%32.556.8
東京都30923950348%37.7348.5
神奈川県17113028546%31.4194.8
富山県1078916255%148.987.4
石川県13411320356%175.5147.0
福井県826813152%163.1122.2
山梨県977712064%140.2126.3
長野県35927848058%223.7143.7
岐阜県20217929162%140.6134.8
静岡県19014027052%72.098.6
愛知県22120029368%40.398.7
三重県A888618048%97.988.5
三重県B  673 366.0330.9
滋賀県898116350%116.9126.7
京都府13710619854%77.9169.1
大阪府1109722843%25.7172.8
兵庫県20417736548%65.5131.8
奈良県544620023%142.823.55
和歌山県413610734%105.097.3
       


@統計上数:文科省の統計上の博物館数=登録博物館+博物館相当施設+博物館類似施設
A博物館のみ:文科省の統計上の博物館数のうち 美術博物館、動物園、植物園、動植物園、水族館を抜いた館数
B調査結果:博物館の実数(上記条件による)
Cカバー率:統計上の博物館と実数の比率 A÷B
D人口比:県の人口100万人あたりの館数 B÷県別人口数×1000000
E面積比:可住面積10万平方キロあたりの館数 B÷可住面積×100000

三重県は「まちかど博物館」すなわち個人や事業所がボランティアで展示をしている小博物館が非常に多くある県です。
それを抜いた館数をA、含んだ館数をBとしました。
他の県はそれほど多くはないのですが「まちかど博物館」を含んでいます。

48都道府県があるうち調査済みの19県を示します。
まだ19の県しか調べていないということです。
ちなみに実地調査とはいいながら、実際に中に入り展示まで見ているのは2500館ほどです。見に行ったのですが休みだった、予約が必要だったというように中に入っていない館を入れても3000館弱でしょう。多く見ている方だとは思うのですが、それでもまだまだですね。

調査済みの県の博物館の数はほぼ確かな数字だと私は思っています。しかし頻繁に新発見の博物館もありますので、十分調べられていないということで もっと増えるかもしれません。誤差を含むと思ってください。

絶対数が多いのは調査済み県の中では 東京都 503館 次いで 長野県 480館 兵庫県 365館
ただし後で書くように、北海道の博物館がかなり多いことが推測できますので、東京、北海道、長野が博物館の多い県でしょう。
愛知県 293館 岐阜県 291館と続きます。
三重県は 通常の博物館は 180館ですが、まちかど博物館を含めた数字では673館となり1位となります。

逆に最も少ないのは今のところ和歌山県の107館ですが、東北、四国、九州の調査が進むにつれ更に少ない県は出てきそうです。

傾向的には
・都市部の博物館数が多い。
 特に都市部近隣、ベッドタウンを多くかかえる県が多い。
 理由は、人口密度が高くベッドタウンとしての顧客が期待できる。土地が比較的安く、広い土地の確保が可能という条件もあるのでしょう。また勤労世帯が多いので比較的財政に余裕がある。もう一つの要因としては他の地域からの移入者が多く、地元とのつながりが希薄な中で住民どおしのアイデンティティーを求め、新たに共通要素となる地域の歴史を知ってもらおうという自治体の考えがあったのだと推定しています。

・石川、福井、富山などの日本海側がの密度が高い。
北陸が博物館の集中県。県民性というか、教育熱心な地域なのでしょう。

・長野県、岐阜県の内陸部も博物館密度が高い。
 特徴的なのは長野県。
 実調査して気が付くことは有料の施設の比率が特に高いのです。
 一般的、特に都市部では無料施設が多く50%程度になるのですが、長野県ではその比率が極端に低くなりほとんどの施設が有料です。
 博物館は入場料をとっても採算が取れないので、ならば無料にして来館者を増やし学んでもらおうという思想のため無料の館が増えるのですが、  長野県はお金をとっても人が集まるとでもいいたげな。来館者がこないという悩みは他の県との比較では少ない。長野県人も博物館に対しての負担は気にならないという人が多いのでしょう。博物館に対して理解が深いという県民性があるのかもしれません。

・観光地が多い県、観光に力を入れている県には博物館が多い。
ミクロ的に見ても観光地周辺では博物館が多い傾向があります。博物館に観光施設としての役割があるためでしょう。

推計を含む全体博物館数比較



オレンジ色は調査済み、実数に近い数字。ブルーは推測です。
推測の方法は 文科省から発表されている県別の登録/相当施設から 実際に行って確認した地域のカバー率、すなわち発表館数/実館数を算出し 未調査の地域のカバー率も同等55~60%と仮定して単純計算をして算出してみました。

博物館の絶対数が多い県は 北海道、東京都、長野県。次いで兵庫県、新潟県です。
特に北海道が多いので今後推定だけではなく優先して調査をしてみます。
千葉県、埼玉県は博物館が多い地域と言われていたのですが、数は必ずしも多いとは言えないようです。
静岡県は県立博物館がない珍しい県なのですが、総数ではむしろ多い地域となっています。
逆に少ない県は 高知県、香川県、徳島県の四国勢です。

人口比比較



県別の人口比で見ると 東京、神奈川、愛知など大都市圏、人口が多いので大きく順位を落とし、北陸勢が順位を上げてきます。

大阪府が人口比で見ると日本で最も博物館が貧しい地域と断定できます。
教育に不熱心な県民性があるのかもしれません。

大阪府が日本で最も博物館の数が少ない都道府県ということになります。
実存的で教育に不熱心な県民性が出ているのかもしれません。
実際に行って見ると確かに数は少ないのですが1館1館の質が非常に高いのに気がつきます。
私は大阪万博の影響だと考えています。当時万博を見て 大阪府民の展示館に対する要求レベルが上がってしまい、小さく貧弱な博物館は認めない、作るなら万博パビリオンに負けないくらい大きくて立派な博物館をと志向した結果ではないでしょうか。

人口あたりの館数は
長野県、石川県、島根県が博物館の優勢地域ということになります。
ここでも三重県はまちかど博物館を入れると366館とダントツになります。個人でも博物館を開きたいという博物館に熱心な地域の代表格です。

島根県が人口が少ないせいもあるのですが、二位に入ってきます。
館数も内容も未調査地域で推測が多いので、ここでは解説を避けておきます。しばらくお待ちください。

面積比比較



東京都は小さいが人口が集中しているので密度ではダントツになります。博物館をたくさん見るのには最適で便利な地域です。

東京は日本の中央、歴史もあり、企業も多く企業博物館も多くあるためでしょう。
北海道は絶対数でも、人口比でも数は多いのですが、広い大地の中で密度としては最も低い地域となってしまいます。

日本全体の館数推定

全国に博物館はいくつあるのかというのは誰しもが持つ疑問でしょう。
ある程度の信頼度がある館数を推定してみましょう。

日本全体で文科省からは5,747館 と発表されています。これは美術館、動物園、水族館を含んだ数で私の集計とは基準が異なります。
ここから それらの館数を引いてみると4,882館という数値が得られます。
前述したようにはっきりしている17県の実数と文科省の比率を未調査の地域にあてはめて出してみると全体館数の集計では9,500館という結果が出ます。

今の段階では 日本全国に博物館は9,500館あるとしておきましょう。
誤差は5%すなわち9,000〜10,000館といったところでしょうか。

調査が進むにつれて精度が上がってきますので、もうしばらくお待ちください。

「そんなにたくさんあるの?」、「そんなにたくさんはないはずだ」というのが一般的な反応だと思いますが、探してみると近所でもたくさんあるものですよ。

全体としては整理 減少の方向に進んでいます。
平成合併で市町村が統合されたのが大きな要因です。また昭和後半に多く作られた博物化が来館者が低下とともに注目度も薄れ、経費削減も限界に達し、積極的な博物館活動もできなくなり、来館者低下の悪循環におちいり、静かに休館、閉鎖されていく館が多いように観察できます。
一方で多く作られた博物館が古くなり、意欲的なリニューアルもされているところも多いので、博物館のおもしろさは増えているように感じます。

2015.7.1 清水 健一


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